〜 第三十六話 〜
まだ東京の梅雨は明けていないというのに、たいそう暑い日が続きますね。身体が暑さになれていないせいか、余計に堪える気がします。同じ暑いなら真っ青な夏空の下にいる方がスッキリするというものです。節電の夏ということでマスコミの話題もいかに電気を使わずに涼しく過ごすかということに集中しているようです。つい100年くらい前までは電気のない暮らしをしていたと思うと、猛スピードで生活が変わったとあらためて感じました。そんなことを考えていたときに1冊の本に出合いました。『彩色江戸物売図絵』という三谷一馬という風俗画家の大家の本です。江戸の町を往き来していた様々な物売りを絵で再現し解説を添えています。
夏の風物詩になりそうな姿を探してみると、まくわ瓜売り、西瓜の切り売り、冷水売り、すいとん売り、枝豆売りと食べるものが多いのですが、なかにはきりぎりす売りという風流なものもありました。耳から涼むなんて素敵ですね。この時代の人々の感受性は現代の私たちよりずっと豊かだったのかもしれませんね。
(文・渡辺明子) |